交通事故にあったら
治療を受ける際の注意点
交通事故の治療の際には、以下の点について、注意をするのがよいでしょう。
高額診療、過剰診療
交通事故の治療には、通常は健康保険を使用せず、治療する医師が価格を決めた自由診療で行われます。多くの場合、健康保険の単価の2倍~2.5倍の金額を保険会社に医師は請求しますが、中には健康保険の単価の2.5倍以上の金額を保険会社に請求する医師がいます(これを「高額診療」と言います)。また、医師が不必要な治療を行って治療費を請求することもあります(これを「過剰診療」と言います)。
交通事故の損害賠償として認められるのは相当因果関係ある損害ですので、高額診療や過剰診療の場合、保険会社は支払を拒否し、訴訟で請求しても治療費を損害として認められない場合があります。
高額診療について、健康保険の単価の2倍を超える部分について、治療費の一部を否定した判決や、医師の転院を繰り返した場合に治療費の一部を否定した判決もありますので、高額診療や過剰診療の場合は、自分で治療費を払ったりしないよう注意が必要です。
整骨院、鍼灸院の治療
むちうち症などの神経症状では、整形外科の治療より、整骨院や鍼灸院での治療のほうが効果のあることがあります。整形外科医が治療の必要性を診断書に記載してくれた場合は認められやすいのでが、整形外科医が医師にとっては治療内容や効果の不明な整骨院や鍼灸院での治療の必要性を認めて診断書を書いてくれることはまれです。
整骨院の治療費については医師の診断書がなくとも、保険会社に相談すれば認めてもらえるケースもあります。
なぜなら自賠責保険では、はり、きゅう、指圧の費用については、医師が必要と認めた場合を原則としますが、傷害の程度・態様からその必要性が認められるときは、必要かつ妥当な実費については支払がなされるので保険会社は支払った治療費を自賠責保険から回収することができるからです。
柔道整復師の費用については、免許を有する柔道整復師、あんまマッサージ指圧師等が行う施術については、必要かつ妥当な実費は、自賠責保険では必要かつ妥当な実費とされていますので必要妥当な範囲では支払がなされます。実務では整体に関しては、6か月程度、鍼灸に関しては12か月程度の期間が一応の目安とされています。
症状固定後の治療費
症状固定とは、交通事故によるけがについて、これ以上治療を続けてもよくなる見込みがなくなった状態と言います。この時点で残った障害は後遺障害として評価し、自賠責保険の後遺障害に該当する場合は、後遺障害として賠償の対象となります。
治療を続けてもよくなる見込みがないのですから、症状固定後の治療費は、治療の必要性がないので支払われません。
むちうち症等の神経症状で1年程度通院した後、症状固定診断書をもらって治療を続ける場合は健康保険を利用することをおすすめします。
裁判例の中には、症状固定後の治療費を例外的に認めた例(てんかん剤の服用、治療により患部の苦痛が緩和される場合、リバビリテーションの必要がある場合)もありますので、症状固定後にも治療を受けたことを弁護士に伝えておくことが重要です。